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伸筋腱(しんきんけん)断裂

伸筋腱断裂 〜指〜

カッターなど刃物での切り傷の場合(鋭的外傷)、強くぶつける・殴るなどの鈍的外傷のどちらでも腱の断裂が生じます。

指に力が入りにくかったりしますが、多くの場合には指を少しは伸ばすことができるため、見逃されてしまうこともあります。

第1関節での伸筋腱の断裂を腱性マレット、第2関節での断裂をボタンホール変形といいます。

 

切り傷による腱断裂の場合には、手術により断裂した腱を縫合するのが原則です。

鈍的外傷の場合には、伸びの程度により、手術をせずに装具で治療する場合もあります。

伸筋腱(しんきんけん)断裂 〜手関節〜

外傷がなくても、腱の摩耗により自然に断裂することがあります(皮下断裂)

よくあるケースは、親指の場合小指(または、くすり指と小指)の場合です。

 

親指の場合

転位(ズレ)の少ない橈骨遠位端骨折(手首の骨折)で生じることが多いです。

長母指伸筋腱(ちょうぼししんきんけん)という腱が、骨折部でこすれて断裂します。

親指が伸びない、上がらなくなります。

長母指伸筋腱の断裂の症例

長母指伸筋腱の断裂により、親指が上がらない状態です。

 

親指の伸筋腱断裂の手術

皮下断裂した腱の断端(切れ端)はバサバサしており直接縫合できないため、人差し指の伸筋腱2本のうちの1本を長母指伸筋腱へ移行して再建します。

 

 

手術後6ヶ月の様子。親指は伸びて、上がるようになっています。

小指(または、くすり指と小指)の場合

関節リウマチや加齢による手関節の変形により、指伸筋腱がこすれて断裂します。

ほとんどんケースでは、最初に小指が断裂し、その後しばらくしてくすり指の断裂が生じます。

 

上の画像では、骨棘(骨の出っぱり)により腱が磨耗しています。

小指(または、くすり指と小指)の伸筋腱断裂の手術

腱をつないでも同じ部位で再断裂してしまう可能性があるため、腱の手術と骨の手術を同時に行う必要があります。

腱は、隣の指の腱への移行または腱移植(長掌筋腱という無くても支障のない腱を採取)により再建します。

骨は、不安定となっている尺骨頭を固定するか、切除してしまいます。

 

断裂したくすり指・小指の腱をまとめて中指の腱へ移行し(中央)、断裂した腱を移植腱により橋渡しします(右)。

 

骨の手術では、腱の再断裂の予防のため、尺骨頭の固定(S-K法)(左)、または、尺骨頭切除(右)を行います。

 

手術後6ヶ月の様子では、指が伸びています。

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