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母指CM関節症

母指CM関節症の症状は?

親指に力を入れる、ものをつまむ、特に、親指を開いて力を入れる動作で親指のつけ根に痛みが出ます。

典型的には、瓶の蓋・ペットボトルを開ける動作です。

進行すると、親指のつけ根が出っぱってきます。

原因は?

「ものをつまむ」動作では、親指のつけ根の関節(母指CM関節)に大きな負担がかかります。

1kgの強さでつまむと、母指CM関節には13kgもの負荷がかかります。

つまり、13倍です。

そのため、母指CM関節は摩耗(軟骨がすり減る)しやすいのです。

進行すると

進行すると、関節がズレてきて(亜脱臼)、力が入りづらくなります。

年数が経つにつれて、亜脱臼が進行し、関節の隙間が減っていきます。

治療は?

まず、母指CM関節の負担を減らす、つまり、強くつまむのをなるべく控える使い方が大切です。

そのうえで、サポーター・装具の使用、ストレッチ・筋力強化などの保存治療を行います。

保存治療でも痛みがよくならない場合、手術が考慮されます。

母指CM関節装具の一例

母指CM関節症の手術

関節が摩耗した場合、膝や股関節では人工関節手術が一般的です。

母指CM関節にも人工関節はあるのですが、その成績は良好とは言えず、国内、世界においてもほとんど普及していません。

関節形成術

最もポピュラーな方法です。

関節の片側の骨(大菱形骨:だいりょうけいこつ)の一部、全部を切除する方法です。

関節固定術

関節を固定する(くっつけて動かなくする)方法です。

痛みをとる効果は最も高いですが、将来的に隣の関節が劣化する可能性があります。

症例

(左)関節形成術:大菱形骨を切除。(右)中手骨と大菱形骨を固定。

関節形成術と関節固定術では関節が温存されないため、将来的に不具合が生じた場合に再手術(サルベージ手術)が難しくなります。

中手骨骨切り術

CM関節を温存する手術です。

母指CM関節症に対する中手骨骨切り術

中手骨の角度を矯正することで、CM関節の適合、亜脱臼の改善を図るとともに、摩耗していない軟骨部分で負荷を受けるようにします。

また、変形の進行の予防にもなります。

変形が軽い場合

術後早期に痛みの改善が期待できます。

右の変形が軽い例では、手術後より関節の亜脱臼が改善しています。

変形が強い場合(進行例)

亜脱臼、痛みが改善するまで数ヶ月要することもあります。

おおよそ、痛みは手術前の10分の1~2ほどとなります。

右の変形が強い例では、手術後から少しずつ亜脱臼は改善し、1年後には関節の隙間も広がっています。

手術について

手術後2週間のギプスシーネ固定

手術創

手術創は、手術後1年もすると、ほとんど目立ちません。

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