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屈筋腱(くっきんけん)断裂

屈筋腱断裂とは?

カッターやガラス、包丁などでの切り傷により屈筋腱(指を曲げる腱)が断裂すると、指が曲げられなくなります

また、傷がなくても、手首の病気(リウマチ、加齢による骨の出っ張りなど)により自然に腱が断裂してしまう(皮下断裂)こともあります

症例

 

屈筋腱は、親指は1本、人差し指〜小指はそれぞれ2本ずつあります。

左の症例では1本の断裂しており、第1関節だけ曲げられなくなっています。

右の症例では2本とも断裂しており、第1関節、第2関節とも曲げられなくなっています。

屈筋腱のメカニズム

前腕にある筋肉は、指先の方にいくにつれて筋腱移行部を介して腱となり、指の骨に付着します。

筋肉が収縮すると腱は引っ張られて滑走し、その結果として指は曲がります。

 

日本手外科学会 手外科シリーズ 12. 屈筋腱損傷 を改変

腱が断裂すると、筋肉の自然収縮により腱の断端(切れ端)は退縮(引っ込んで)してしまいます。

時間が経つと筋肉は収縮したまま硬くなってしまうため、断裂してしまったら早めの手術がよいです。

屈筋腱断裂の手術

切り傷による断裂の場合

受傷後2〜3週以内の場合(新鮮例)には、断裂した腱を縫合します。

受傷からさらに時間が経ってしまうと(陳旧例)、筋肉が収縮して硬くなり直接縫合できなくなってしまうこともあります。

その場合には、腱移植など複雑な手術が必要となります。

皮下断裂の場合

皮下断裂の原因として、リウマチや、加齢による手関節の骨の出っぱり(変形性関節症)、骨折後の変形治癒、橈骨遠位端骨折プレート固定手術などがあります。

屈筋腱の手術後はリハビリが超重要!! 再断裂と腱癒着?

屈筋腱断裂の治療では、丁寧かつ強固な縫合手術はもちろん大切ですが、それ以上にリハビリが重要です。

腱を強固に縫合しても、手術後すぐに普通に動かすと容易に再断裂してしまいます。

かといって、固定したまま動かさないと癒着(周りの組織とくっついてしまう)してしまいます。

そのため、腱縫合部に負荷がかからないよう前腕から手指までのスプリント(外固定)を着けたうえで、癒着しないよう専門的なリハビリが必要となります。

手術後4週程度で外固定を外して徐々に使用できるようになりますが、手術後3ヶ月頃までは再断裂の可能性があるので注意が必要です。

腱の強度は、手術後3ヶ月で正常の約50%、6ヶ月で正常とほぼ同等となります。

 

屈筋腱の縫合手術から3ヶ月後の様子。指の屈曲は良好です。

腱が癒着した!?

腱が癒着してしまった場合、腱が治癒するのを待ってから癒着を剥がす手術(腱剥離)をすることがあります。

時期は、腱縫合手術後4〜5ヶ月頃が目安です。

腱の癒着があると、力が伝わらず指が曲がりません。

腱剥離手術後1年。指の屈曲は良好です。

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